親愛なる母へ




長年の思い込みは、簡単には払拭されない。

しかしこれまで真黒に塗り潰されていた母親のイメージが、柔らかい色に包まれ始めていた。

それは今後、くっきりと浮かび上がることはあるのだろうか。

母親。

そして亮が、自分が密かに恋心を抱いていた人が、愛した女性。


「ふ……」


未央子は乾いた笑いをもらす。

とんだ愛憎劇だ。

亮に愛されていた女という点で、未央子が母親を想像するのを邪魔する。