テーブルの上に置かれた幾つもの封筒を前に、未央子は膝を抱えている。

あの日、かつて母親が入院していた病院を未央子が訪れた後、亮に手渡されたものだった。

亮は、あの病院で保管されていたそれらを自らの手で未央子に渡すため、受け取りに行っていたのだという。

白く細長い、味気のないそれらには、“長坂未央子様”と書かれていた。

不思議と、母親の字だとすぐにわかった。

その字を見て初めて、幼い頃に平仮名を教えてくれた記憶が蘇る。

彼女はきちんと母親らしいことをしてくれていたのに、それを全て忘れ、記憶を憎しみで染めていた自分が恨めしい。