頬を伝う涙が、熱い。 確かにそう感じるのに。 自分は本当に、ここにいて、生きているのだろうかと未央子は考える。 母親の心の中に、自分は存在しない。 母親の心の中で、自分は死んだ、いや、そもそも産まれてもいないのだ。 「忘れないでよ……」 届かぬ声を、願いを、 「思い出して……」 どこへともなく吐き出した。 行き場のないそれは、ただ地面に落ちる。 母の記憶から消された自分の存在は、あまりに儚い。