親愛なる母へ




彼女から、大切なものを奪いすぎた。

自由と、そして、記憶と。

大切な人だったのに、守れなかった。

大切な人だからこそ、その罪は重い。


『亮君』


曇りのない瞳が、見上げる。

あまりに綺麗で眩しくて、直視できないのは、この身が汚れ過ぎたからだ。



体の横に垂れた手を、握り締める。

爪が食い込む。

その痛みが、念を押す。

この微笑みを奪うことは、二度と許されない。