親愛なる母へ




『今日も来てくれたの……』


少し不審の色をたたえた瞳。

無理もない。

家族どころか、どこの誰ともわからない若い男が、毎日のように見舞いにやってくるのだから。

でも。


『あなたの名前は……?』


思い出して。


『そう。亮君っていうの』


以前と同じ響きで名前を呼んで。


『入院仲間だったって、先生に聞いたわ』


それだけじゃない。


『優しいね』


優しいわけじゃない。

ただ、


『ありがとう』


ただ、あなたを。