会いたいのに会えなかった今までとは違う。 彼女は今、会おうと思えば会える場所にいる。 けれど、会ってはいけない。 “会わない”方を、選ばなければならない。 こんなことなら、“会えない”ままの方がよかった。 「それなのに、どうして亮は、あたしを……」 こんなところまで、連れて来たの。 その言葉は、喉の手前で涙に飲み込まれて消えた。