親愛なる母へ




行き場の無い怒りをぶつけるように、未央子はこぶしを振り上げ、それを自分の膝に落とそうとした。

しかしその手は、亮によって空中で止められる。

亮は未央子の視線を捉えて、強く言う。


「一葉ちゃんは悪くない。内緒にしてほしいって無理言ったのは俺なんだ」

「でも……っ!」

「俺がどうして未央子を探していたのかも、一葉ちゃんは知らない。本当に何も知らないんだ。知ってたら、俺なんて振り切って、未央子に伝えるだろ?そういう子だろ?」


不器用で、嘘が苦手な一葉。

隠し事をしようとしたことはあるものの、成功した試しなどなかった。

亮に掴まれていた手が、力を失くしてずるりと膝に落ちる。