親愛なる母へ




なぜ、あの時感じた違和感に注意を向けられなかったのか。

握ったこぶしの中に、爪が食い込む。

亮と一葉のぎこちない対面は、一葉の人見知りがそうさせていると思っていたが、突然の再会に驚いたためだったのだ。


「ああ、未央子を探していて、辿り着いた。イギリスにいることを教えてくれたのは、一葉ちゃんだ」


その言葉を聞いて、急激に頭に血が上る。

浮かぶのは、一葉の頼りない笑顔。

あの裏に、隠されていたものがあったなんて。

一葉が自分に隠し事をしていたなんて。

手が、震える。