親愛なる母へ




傷をなぞりながら考える。

母はなぜ、自分に暴力をふるっていたのだろう。

辛いのは未央子の方なのに、いつも母の方が苦しそうな顔をして、涙を浮かべていた。

あの複雑な色をした目を思い出すと、恐怖よりも悲しみが胸を支配する。

辛うじて罪悪感があったのだろうと、未央子は解釈していた。

それでも、無意味に子どもに手を上げて良い親などいない。

だから、未央子は彼女を憎む。

それ以外の感情の向け方は、小さな頃に失くしてしまった。