ゆっくりと、闇に飲み込まれていくのがわかる。


“何も覚えていない”


その言葉の意味が、少しずつ、未央子の中に浸み渡っていく。

未央子は飲み込まれた闇の中で、そのうねりに身を任せる他になかった。

もがいたら、溺れてしまう。

いや、むしろ、その方がいいのか?

複雑で悲しい現実を受け入れるより、このままおかしくなってしまう方が楽なのかもしれない。

息が苦しい。

うまく空気が吸えない。

未央子は思う。

きっとこの闇の中に、酸素はないのだ。