会える場所にいるのに、“会えない”。
それはつまり、未樹が自分のことを思い出してはいけないからだと、未央子は悟る。
母親が自分を産んだことは、彼女にとって忌まわしき過去。
それを抱えたままでは、生きられない。
だから、手放した。
記憶を丸ごと手放して、新しい人生を歩むことを決めたのだ。
他でもない、母親自身が。
だから自分が、母親の前に姿を現すことは決してあってはならない。
穏やかに生きている彼女を、再び地獄に突き落とすことと同じ。
それは未央子にとって、二度目の罪になる。
メニュー
メニュー
この作品の感想を3つまで選択できます。
読み込み中…