親愛なる母へ




どういう意味かと聞くより前に、“もう会えない”の一言が、未央子の思考回路を遮断する。


“会えない”


それは覚悟していたことだった。

母親探しを始めた当初、母親がもう既に他界しているという最悪の可能性をも考えたのだから。

それなのに、なぜこんなにも、心を揺さぶるのか。


「未樹さんは、ある事故で記憶を失くした」


じわり、じわりと、闇が近付いてくるのを、未央子は黙って見ていた。

けれど正確には、


「何も覚えていなかった。俺のことも……未央子のことも」


動くことが、逃げることが、できなかっただけだ。