親愛なる母へ




耳の奥で、血管が脈打つ音が聞こえた。

その音に妙な危機感を感じた未央子は、かき消すように口を開く。


「亮。ねえ、教えて」


すがるように腕を掴むと、亮の目はようやく未央子に向けられた。

しかし、未央子はひるんだ。

その目があまりにも悲しげで、頼りなく揺れていたのだ。

亮のこんな目を、未央子は今までに見たことがない。

さっきまでうるさく鳴っていた心臓が、無理矢理抑え込まれて音を失くす。


「未樹さんにはもう、会えないんだ。少なくとも俺達は、会ってはいけない」