耳の奥で、血管が脈打つ音が聞こえた。 その音に妙な危機感を感じた未央子は、かき消すように口を開く。 「亮。ねえ、教えて」 すがるように腕を掴むと、亮の目はようやく未央子に向けられた。 しかし、未央子はひるんだ。 その目があまりにも悲しげで、頼りなく揺れていたのだ。 亮のこんな目を、未央子は今までに見たことがない。 さっきまでうるさく鳴っていた心臓が、無理矢理抑え込まれて音を失くす。 「未樹さんにはもう、会えないんだ。少なくとも俺達は、会ってはいけない」