今の今まで精神病棟にいたので、亮の入院先もそこだと思い込んでいた。
それに気付き、亮は付け加える。
「交通事故に遭って骨を折っただけだよ」
するとようやく、未央子は自身の思い込みに気付く。
しかし、入院するほどの事故だというのだから、それは大ごとだ。
「骨、折ったんだ……。痛そう」
未央子は神妙な顔つきで、ぽつりと言った。
『足……痛そう』
『交通事故に遭ったんです。そりゃあもう、痛かったですね』
「うん。痛かったよ……すごく」
淋しげに小さく笑う亮の横顔に秘められた想いを、未央子はまだ知らない。
「座ろうか」
向かう先に古い木のベンチがあり、亮が先に腰を下ろした。
未央子は少し離れて座る。
きしむ音が、二人を受け入れた。


