親愛なる母へ




亮は茫然とする未央子の手を引いてエレベーターに乗り、病院の廊下を歩いた後で、正面玄関と違うドアから外に出た。

ささやかな花壇の横を通り、開けた場所に出る。

看護師に連れられた部屋着姿の人を何人か見かけた。

おそらく入院患者だろう。

なぜこんな場所を亮が知っているのかと、未央子は頭の隅で考えていた。

それが聞こえたかのように、亮は口を開く。


「前に、この病院に入院してたことがあるんだ」


その言葉が、ぼんやりとしていた未央子の頭を覚醒させ、心臓を縮ませる。