なかなか踏み出せずにいる未央子に、亮は静かに問う。 「どっちを、怖がってる?」 未央子は顔を上げる。 色素の薄い目に見つめられると、無償に泣きたくなった。 どっちを怖がってる? そんなの、わかっていたら、怖がる必要なんてない。 未央子は頭を軽く振る。 怖がるのは、臆病だからではない。 臆病なのは、怖がったままで歩き出さないことだ。 未央子はぐっと口を引き結んで、産婦人科のドアを押し開けた。