親愛なる母へ




展望台へ続く階段を、彼女を励ましながらゆっくり上る。

調子が良いと言っても、体力は落ちているのだ。

時折、息を整えるために立ち止まり、足をほぐしたりしながら、懸命に上を目指した。

そして、最後の一段に足をかける。

突如、目の前の景色が開ける。


「綺麗……」


彼女は目を細めた。

風が彼女の髪を、優しく揺らす。

亮はしばし、彼女の横顔に見入っていた。

目の前に広がる美しい景色を前にしても、彼女しか目に入らなかった。

ふいに、彼女がこちらを向く。

そして、穏やかに微笑んだ。


「亮君、ありがとう」