展望台へ続く階段を、彼女を励ましながらゆっくり上る。
調子が良いと言っても、体力は落ちているのだ。
時折、息を整えるために立ち止まり、足をほぐしたりしながら、懸命に上を目指した。
そして、最後の一段に足をかける。
突如、目の前の景色が開ける。
「綺麗……」
彼女は目を細めた。
風が彼女の髪を、優しく揺らす。
亮はしばし、彼女の横顔に見入っていた。
目の前に広がる美しい景色を前にしても、彼女しか目に入らなかった。
ふいに、彼女がこちらを向く。
そして、穏やかに微笑んだ。
「亮君、ありがとう」
メニュー