思えばこれは、予兆だった。
しかしその真相は、彼女にしかわからない。
無邪気すぎるほどの笑顔に感じた違和感を、亮は気に留めなかった。
亮は、ごく普通のデートに浮かれていたのかもしれない。
彼女とこうして外の世界を歩くことができる日が来るなど、期待さえしていなかった。
それが、思いがけず巡ってきたものだから、とても冷静ではいられなかったのだ。
病院側が亮を信頼して外出の同伴として認めたという、いわば保護者という立場だが、そのことは都合良く無視をする。
彼女の薬指には古い指輪が光るが、今日は見ないことにしようなどと、あまりに気楽なことを考えていた。
ただ、浮かれていた。