*
青い空の美しい日だった。
彼女はひどく上機嫌だった。
このところ体調も安定しており、サポートしてくれる家族があったなら、退院しても良いほどに回復していた。
外出届が受理されない理由は、もはやどこにも無かった。
「どこへ行く?」
二人で並んで歩きながら、亮は軽い足取りの彼女に問う。
「展望台に行きたい。高い所から、この街を見たいな」
彼女の言うそれは、この街のはずれにある。
小高い丘の上にあり、街全体が見渡せる大きな公園の一角だ。
「いいよ、行こう。疲れたら言うんだよ」
そう言うと、彼女はうれしそうに笑った。