親愛なる母へ




期待していたわけではない。

しかし、期待していなかったわけでもなかった。

自分の感情がよくわからない。

母親に会いたいのか、それとも怖いのか。

未央子は小さく息を吐く。

その時。

看護師が去っていった方向から、足音が聞こえた。

わずかに違和感を覚える。

看護師のナースシューズが、こんなに重い音を立てていただろうかと。

もたれた体を起こす前に、首だけ動かしてそちらを見た。