彼女は首を傾げる。
「久保さん、ですか。……ごめんなさい、他の者に聞いてみますね。ここでお待ちいただけますか」
そう言って、再びナースシューズを鳴らしながら、彼女は部屋の奥へと消えていった。
そこから中を覗き見ると、ナースステーションらしきものがあるのがわかった。
未央子は、扉の外から見えていた白い壁にもたれ、ぼんやりと考える。
母親がこの病院に転院してから、もうずいぶんと経つはずだ。
ごく最近になって入院することになったなら無理もないが、入院患者が看護師に名前を覚えられていないのはおかしい。
先ほどの看護師が“久保未樹”の名前を知らないということは、つまり彼女は、入院には至らなかったのだろう。


