親愛なる母へ




戸惑いながらも、エレベーターが口を開けるので、そこに乗り込む。

ボタンは5階のものしかなかったので、それ以外を選ぶことはできない。

やけにのんびりとしたエレベーターは、広いのになぜか息苦しい。

電子音が鳴ると同時に扉が開かれた。

踏み出すが、その足はすぐに止まることになる。

待っていたのは、一枚の扉だ。

ガラス張りだが、ここに入ってすぐに曲がり角になっているのか、それを通しても目の前の白い壁しか見えない。

その部屋以外、前後左右に頭を巡らせるが、他には何もなかった。

扉の取っ手に手をかけてみる。

しかしそれは動かなかった。

間違って来てしまったのだと、未央子は判断する。