親愛なる母へ




夜にはバーになる静かな店でランチを摂りながら、未央子はこれまでのことを亮に話して聞かせた。

話し終えた後、未央子は穏やかに微笑む。

亮が未央子のそんな表情を見たのは、初めてだった。

いつもの、生意気すぎるほど強気な態度と、周囲のほとんどを敵だと思っている目は、今はなかった。


「なんか未央子、変わったな。お母さんに対する刺々しさが消えたみたいだ」


亮がそう言うと、未央子は照れくさそうに小さく笑う。


「あんなに恨んでたのに、不思議なんだ。知れば知るほど困った人でさ、情が湧いたっていうか」


未央子は胸元の傷痕に触れ、そっと撫でる。