母親へ向かう道にかかっていた濃い霧が、徐々に晴れていく。

未樹の病気は簡単に治らないということだから、今も尚、その病院にかかっている可能性は高い。

もしかすると、次が最終目的地かもしれなかった。

未央子は亮に簡単にメールを入れて、母親の居場所の手がかりを得たことを伝えた。

そこに行く前に、亮にこれまでのことを話したいので、時間があれば会いたいとも。

その一言を付けるのに、未央子は多大な勇気を使った。

“会いたい”なんて、恋人だけが使える言葉なのに、と。

しかし大学が夏休みに入った以上、キャンパスでばったり会うこともなく、そう言う他になかったのだ。

未央子は熱くなる頬を抑えながら、目をつぶって携帯電話の送信ボタンを押したものだった。