未央子は言葉を飲み込んで、唇を噛む。
そして亮に声をかけたことを後悔し、頼ろうとしていた自分を叱咤した。
そもそも、ほとんど面識のない人間に頼むことではない。
パニックになって、正しく頭が働いていなかったのだと、自分に言い訳した。
「何?」
亮に促されるも、未央子は無視をして、自分のバッグを探る。
そして取り出した、先日亮に押しつけられたハンカチを、今度は亮の胸にぐいと押しつけた。
「これ、ありがと。それだけ」
感情も込めずにそう言い放ち、踵を返す。
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