親愛なる母へ




「久保さんはとてもまっすぐな人だよ。まっすぐすぎて、不器用だった」


桐島の言葉に、未央子は小さく頷く。

未樹の虐待が、憎しみや、未央子を支配するために生まれたものだと、今はもう思わない。

未央子がこれまでの中で知った未樹は、策略めいたことはできない。

そして、もし本当に未央子に対して憎しみしかなかったら、それをぶつける時に、あんなに悲しい顔はしない。

未央子は、未樹に同情さえしていた。

愛情を愛情として表現できずに、自分を苦しめた未樹は、哀れな人だと。

哀れで、愛すべき存在だと。