親愛なる母へ




桐島は自身の椅子に戻り、未央子を見つめる。

そしてしみじみとつぶやく。


「君が久保さんに似ていてよかったよ。そうでないと、赤の他人に話をしたのではないかと、自分を責めるところだからね」


その言葉を聞いて、未央子は目を丸くする。


「あたしが、母に、ですか?」


両親のどちらに似ているかなんて、誰かに言われたことも、自分で意識したこともなかった。

まさか、母に似ているだなんて。

以前の未央子であれば、それに嫌悪していたかもしれない。

しかし今、確かに心が温かくなるのを感じた。

自分の中に母の面影が生きていることが、単純にうれしいと思える。


「でも、さすがに金髪は、どうかと思いますよね」


未央子が自分の髪をつまんで見せると、桐島はおかしそうに笑った。