親愛なる母へ




彼女の心を蝕む魔物は、思った以上に根強くそこに棲み付いていた。

カウンセリングや認知療法など、一通りの心理療法を試した後、見切りをつけた彼女は退院した。

うつ病の症状は無くなっていたので、病院側から無理な反対はできなかった。


「そこで、主治医は交換条件を持ちかける。退院を許可する替わりに、信頼できる医師を紹介するから、そこで治療を続けるようにと」


窓から外を見ていた桐島が、その場で振り返る。

逆光で表情が見難い。


「ちなみにその医師が勤務している病院は」


彼はごくあいまいに、病院の概要を語る。

しかしそれは郊外にある総合病院だと、未央子には簡単に伝わった。