親愛なる母へ




本当は、入院していた病院のことを、未央子には打ち明けない約束だった。

しかし、未央子の真剣な目をみて、彼はそれを改める。

いつまでも子どもではないのだ。

未央子は未央子の意志で、自分のために、母親に会おうとしている。

そのために努力し、ここまで辿り着いたことを、認めてやらなければならない。

それは父親としての役目だ。

成長した娘と向き合うために、かつての妻との約束を破るのであれば、それはむしろ誇らしいことだ。