親愛なる母へ




「お父さん。お母さんが入院してる病院を教えて。お母さんは、今も入院してるんでしょ?」


しかし彼は、ゆるく首を振った。

未央子は自分の要求が拒否されたのだと思ったが、それは違った。


「退院したよ。でも、その先の行方は、知らないんだ。どうしても、見つけることができなかった」

「そんな……」


手がかりを掴みかけていた手が、虚しく空を切る。

これ以上、母に近付くことはできないのか。


「でも」


父は再び口を開く。

希望はまだ、残されているはずだ。