父があらゆる伝手を辿ってようやく見つけ出した未樹は、自ら精神科にかかって治療をしていた。
うつ病と診断されていたが、実際のところ、何の病気にかかっているかは特定されていなかった。
心の病気は複雑な要因が絡み合って発症するもので、はっきりと、この病気だからこの薬を飲めば治る、というものではないという。
正しい治療が成されているかわからないまま、未樹はそれでも、そこにすがるしかなかった。
仕事にも就けず、アルバイトをして、辛うじて生活費と治療費をまかなっていたが、そこに未来があるようには、見えなかった。


