親愛なる母へ




ある日、彼が仕事から帰宅すると、眠る未央子の傍らで、静かに涙を流し続ける未樹がいた。

未央子の胸元に大きなガーゼが当てられており、未樹は、この傷を自分がつけたのだと言った。

そして、これまでも度々、未央子に手を上げていたことを告白した。

大切なのに、傷付けてしまうと、未樹は泣いた。

そうしてしまう時、まるで自分ではない何かに支配されているような感覚があるという。

しかしその時でさえ、未央子を憎いと思っているわけではなく、愛していると思いながら、未央子を傷付け続ける。

愛しているという気持ちさえ残っていれば乗り越えられると甘んじて、未樹はそれを続けていた。

しかし、殴った拍子にテーブルで胸を切った未央子の血と涙を見て、我に返った。

このままではいけないと。

自分にも未央子にも、未来はないと。