「お母さんが、離婚しようって言ったの?なんで?」 そう問うと、父は悲しげに眉を下げた。 そして、未央子の首元に手を伸ばす。 大きく襟の開いた服を着ていたので、それは既に露わになっていた。 彼の指が、左側の鎖骨の下にある、くぼんだような痕に触れる。 未央子に残された、母の唯一の面影だ。 「気付けなくて、悪かった。お母さんと未央子を、追い込んでしまったお父さんが、本当は一番悪いんだ」 そう言って、彼はそっと、その傷を撫でた。