まるで昨日のことのように語る父親を、未央子はそれ以上責められなかった。

未樹に対する愛情は、今も尚、温かくそこにあるのだと、痛いほどに伝わってくる。


「どうしてお母さんはいなくなったの?」


それは、どうして離婚したのかと問うのと同じだった。

彼は未樹をまだ想っているのだから、原因は母親だということなのだろうか。

父は、言うまいか迷っているように見えた。

その揺れる目を見据えて、未央子は言う。


「お願い、教えて。あたしは、お母さんのことを知らなくちゃいけないの」


やがて彼は、負けたと言わんばかりに小さく笑って、頷いた。