親愛なる母へ




父親は、何が何だかわからないといった様子で、未央子を見ている。

未央子には、それがたまらなく腹立たしかった。

彼は知らないふりをしているだけなのだ。

未央子が何も知らないと思い、悟られまいとしているだけだ。

それはあのひとが姿を消したあの日から、もう何年にもわたって続けられてきたことだ。

その大きな罪を責めるように、未央子は言い放った。


「この紅茶、お母さんの紅茶だったんだね」


その瞬間、彼は全てを悟った。