親愛なる母へ




ずぼらな父親だが、紅茶だけは昔からおいしく淹れてくれた。

無類の紅茶好きなのだろうと、未央子は勝手に思っている。

やがて彼は、茶葉から淹れたアイスティーを持って戻って来た。

氷の音が涼しげに鳴り、ローテーブルに二つのグラスが置かれる。

丁寧にレモンの薄切りが添えられている。


「レモンなんてあったんだ。冷蔵庫に何も入ってないのかと思った」


皮肉を込めてそう言うと、父は苦笑する。


「未央子が来るっていうから、新しい茶葉と一緒に買っておいたんだ」


それを聞いて、未央子は満足する。

父にとって自分は、以前と変わらず大切な存在なのだと実感できる。