親愛なる母へ




一人暮らしを勧められた時、ひょっとすると“いい人”ができたのかとも思ったが、とんだ思い違いだ。

離婚して随分経つし、未央子にも手がかからなくなった今、父親が第二の人生を歩むことを未央子はむしろ望んでいたのだが、彼にはそんな甲斐性もないらしい。


「あたし、戻ってこようか?」


ため息混じりに未央子が言うと、父親は目を見開く。


「まさか、その話をしに来たのか?」

「違うけど。こんな様子見たら、もう帰ってくるしかないじゃん」

「いや、わかった、ちゃんとするから。未央子は自分の人生を楽しみなさい。さあ、座って。お茶でも淹れようか」


父は未央子を半ば強引にソファに座らせ、逃げるようにキッチンへ向かった。