親愛なる母へ




突如強い力に引かれ、何事かと頭を巡らす亮の目に飛び込んできたのは、鮮やかな金。

この色を、彼は知っている。


「ああ、あんたか」


未央子の大きな目が、亮を見上げる。

しかしそこに亮の知る勝気な色はなく、焦りを含んでいるように見えた。

どうしたのかと口を開きかけたところで、


「千葉ぁ。先、講義室行ってるわ」


前方から、友人の声が飛んでくる。

亮が片手を上げて応えると、彼らは好奇の目で未央子を一瞥し、講義棟へ続く道へと消えていった。

去り際に聞こえてきた言葉が、未央子をまた不機嫌にする。


「あの子知ってる。何?千葉の知り合いなの?」