親愛なる母へ




ぴたりと足を止めるが、すぐには振り返ることができなかった。

中森と会ったことを話していない後ろめたさが、未央子をそうさせる。


「未央子?」


前に回り込まれて、顔を覗き込まれる。

思いがけず、心臓が跳ねる。


「どうした?テストできなさ過ぎておかしくなった?」


心配そうな表情をつくるも、亮は未央子の頭をノックするように叩くので、からかわれていることをすぐに理解した未央子は、頬を膨らませる。

ようやくいつもの調子に戻ると、亮は安心したように小さく微笑んだ。