親愛なる母へ




うつ病の症状が重い時、考え方がどうしても悲観的になってしまうのは、本を読んで知っていたし、何より彼女を見ていればよくわかる。

つまり、彼女が我が子に会えないと思っていたのは、完全なる事実なのではなく、彼女がそう思い込んでいるだけのことなのかもしれないと、亮は考えた。

病状が回復してきた今、彼女は娘に会いに行ってみようと考えているかもしれない。

そんなふうに前向きになることを、亮は喜ばしいことだと思った。

しかしそれは、あまりに楽天的な考えだ。

忍び寄る闇は、既に彼女の背後にまで迫っている。

ともすると、彼女の方から歩み寄っているのかもしれなかった。