親愛なる母へ




「手紙、もう結構たまったよね」


二人は、作り付けの机に視線を向ける。

一番下の、一番深い引き出しに、今まで書いた手紙が眠っていることを、亮も知っていた。

宛先の主に読んでもらえないままの悲しい手紙達を思うと、亮は言わずにはいられない。


「いつか娘さんに読んでもらえるといいね」


彼女が悲しげに眉を下げ、泣きそうな顔で「無理よ」とつぶやくのを知っていながらも。

しかし、この時は少し違った。


「そうね……」


そっと微笑んで、ささやくようにそう言った彼女は、窓の外に視線を向けた。

そこにはいつもの儚さはなく、希望のようなものを、亮は見た気がした。