親愛なる母へ




ふいに手に感じた温もりが、亮を現実へと引き戻す。

顔を向けると、彼女が床に膝をついて、覗き込むようにして亮を見ていた。

眉を少し寄せて、難しい顔をしている。

その表情がどうにも愛おしく感じ、亮はその頬に触れずにはいられなかった。


「手紙、終わったの?」


しかし彼女はその問いには答えず、尚も眉を寄せている。


「亮君がぼんやりするなんて、珍しい」

「そう?」


亮は椅子から立ち上がり、代わりに彼女を椅子に座らせる。

髪を撫でてやると、彼女の表情がようやくほころんだ。