親愛なる母へ




『お見舞いには?』

『来ないの、絶対に』


あまりにきっぱりとした彼女の口調を不思議に思い、亮はさらに問う。


『もしかして、入院していることを知らない、とか?』


彼女は小さく頷き、語る。


『前の夫との子なの。離婚して、彼に引き取られて行った』

『それから、会ってないの?』

『それが約束だから』


それはあまりにも残酷だと、亮は思う。

自らが腹を痛めて産んだ子どもと離れ離れになった揚句、二度と会えないだなんて、そんなに悲しいことがあっていいだろうか。