真実はわからない。

未樹の本当の気持ちは、誰にもわからない。

それでも、未央子はとめどなく涙を落した。

母親は確かに自分を愛してくれていたのだと、なぜか今は、素直に信じることができた。

母に注がれたはずのたくさんの愛情を、自分はなぜ忘れてしまったのだろう。

記憶を手繰り寄せようにも、見付からないことが悔しくてたまらなかった。

未央子は確かに、愛されて産まれてきた。

学生のうちに妊娠し、悩まないはずはないことを、未央子が一番よく知っている。

しかし未樹はその大きな葛藤の中、産むことを決め、そして自身の夢を捨てた。

その事実だけでも充分に愛を感じることができる。

だからこそ、思う。

未樹の未央子に対する虐待には、かつて兵藤が言った通りに、確かに理由があるのだ。