「母は……」
ふり絞るようにして出した声は、頼りなく震えた。
しかし中森の優しい笑顔が、全てを受け止めてくれると言っている。
「母は、あたしを愛していたんでしょうか」
その一言を口にした途端、視界がぼやける。
これまで誰が何を言おうとも、未央子は母の愛を疑っていた。
しかし、未央子を抱く未樹をその目で見た中森の言葉なら、今なら信じられるかもしれない。
目の中を漂っていた涙が、やがて決壊して、視界が戻る。
そこに見た笑顔が、まるで母親のようだった。
まるで、未樹のようだった。
記憶にもないのに、母の声が聞こえた気がした。
『私はあなたを、とても愛している』
と。
