親愛なる母へ




始まりは、自身が母親になることができるのかという不安を払拭したいだけだった。

そのために、未樹がなぜ未央子に手を上げていたのか、その理由を知る必要があった。

しかし未樹の過去に触れるうち、未央子の記憶の中の母親と、知人を通して知る未樹の人間像にずれが生じていることに気付いた。

それは、虐待の記憶に埋もれた事実が、確かに存在することを意味する。

未央子は何かを見落とし、思い違いをしている。

ただ虐待という事実だけに焦点を当てていては、大切なものを見落としてしまう。

彼女が何を思い生き、そしてその背景には何があったのかというところまでを、知る必要があるのではないだろうか。