親愛なる母へ




未央子は膝の上で手を握り締める。

ひょっとすると、これから未央子がしようとしていることは、父娘の関係を壊してしまうものかもしれない。

そのリスクを犯してでも、そうする意味はあるのだろうか。


「未央子さん、お母さんを恨んでるの?」


突如、中森が直接的な問いをぶつけてくる。

未央子は自分の気持ちを整理するように、口を開く。


「恨んで……いました、ずっと」


しかし、中森の言葉を信じるとすれば、全ての記憶が明確ではなかったと言える。

まだ幼いこともあったし、虐待の記憶が強烈過ぎた。

もしかすると、思い違いをしている所があるかもしれない。