親愛なる母へ




「千葉ぁ!3限始まるぞ!」


フェンス越しに、今登校してきたらしき同じ学部の友人が叫ぶ。

1限は亮が代返し、2限が休講だったのをいいことに、今の今まで寝ていたような顔をしている。

千葉は時計を見て、スピードを緩めた。

クールダウンもそこそこに、タオルを首にかけて、バッグを掴む。


「好きだね、せっかくの休講なのに。しかも暑いし」


半ば呆れたような表情の友人に、千葉は小さく笑って応える。

走る者の気持ちは、走る者にしかわからない。

しかし、こめかみを伝う汗を拭って顔を上げると、なるほど、もう夏の日差しだ。