親愛なる母へ




妊娠が発覚して間もなく、珍しく長坂が短大までやってきて、中森の前に現れた。

既に就職していた長坂は、無理を言って仕事を休んできたという。

そしてひどく狼狽した様子で、未樹はいないかと聞く。

未樹はその日、大学には姿を見せていなかった。

しかし友人の誰もが、さほど気にも留めていなかった。

大学でのたった一日の無断欠席は、誰にとってもさほど珍しいものではない。

そのため、長坂が見せてきたメモを見て、度肝を抜かれる。


『あかちゃんといっしょに死にます』


それは、半同棲状態の長坂の家に残された、未樹の置き手紙だった。