親愛なる母へ




「そんなに幸せなことばかりなはず、ないじゃないですか。学生時代に妊娠なんかして、よく産もうと思いましたよね」


未央子は自身の体験に重ねる。

結局は思い違いだったが、未央子は自身が妊娠したものとして真剣に考え、中絶しようと決めた。

相手が逃げてしまったことも要因ではあるが、学生で稼ぎのない分際で子どもを産むことは、あまりに無責任に思えた。

すると中森は、さらりと言う。


「未樹は不安定なところがあったから、ふさぎ込むことも多かったかな」


妊娠によるホルモンバランスの変化によってそうなる人は少なくないけれど、未樹は特にひどかったと、中森は加えた。